アボリジナルアートとの出会い
− アボリジナルアートとは −
アボリジナルアートとは世界最古の先住民と言われるオーストラリア先住民アボリジナルの人々が描くアートのことです。彼らはもともと「読む」「書く」といった文字文化がありませんでしたが、彼ら独自の記号のようなものを使いながら砂漠の砂の上や、岩、洞窟の中、ボディーペイントをとおし描くことでコミュニケーションをとってきました。
砂漠という厳しい乾燥地帯で、5万年という長い年月を自然のサイクルに見事に調和しながら生きてきたアボリジナルの人々らが描くのは、その激しい環境の中で生き延びるための水や食べ物の在り処、生活の知恵や、神話など次の世代に思想や精神、掟を伝承するとても重要な情報そのものでした。
そして、1971年にはじめてジェフ・バートンによる壁画に描くこと
の働きかけにより、次第にその幅は拡大していき、やがて西洋の絵の具やキャンバスを使うようになりました。いまや現代美術として人気を博しているアボリジナルアートでありますが、描かれているものはもちろん、公にしてもよい情報のみで、現在も尚、彼らの極秘情報は守られているようです。広大な砂漠から生まれた大地のアート、それは彼らの厳格な文化そのものであり、生き抜くために大地と深く繋がっている芸術作品です。
2011年3月11日東日本大震災以降、「自然との共生」について強く考えさせられたわたしは、大地と共に生きていく術を熟知している、オーストラリア先住民たちのアートを通しそのSoulやSpiritsを学びたいと願い、オーストラリアの内陸、アリススプリングスに向かいました。そして幸いなことに、現地でその制作現場に携わることができたのでした。
「21世紀」を生きる現代のアボリジナル先住民。
日々アートスタジオに絵を描きにくるアボリジナルアーティストの人達と携わると、彼らの様々な一面を幾度となく垣間みることができました。スタジオに来ては 一日一生懸命に創作をし、その収入は全て自分の家族や親戚に分け与える。。。とにかく 家族同士の絆が強いのです。家族だけではなく仲間にたいしても同じで、一緒に分かち合う習慣があるようです。そして とても 人間臭い。よく喜び よく悲しみ よく笑い よく怒る。
幾人ものアボリジナルの人たちから、「Tunami.....Fukushima....」と悲しそうな表情で問いかけられました。彼らは遠いオーストラリアから、わたしたち日本人のことを心配していました。
それにしても 女房が強い!どの夫婦も 夫が妻の尻にひかれている様子でした。 反対に夫は 寡黙でおっとりとしている人が多かったです。(あくまでもスタジオに来ていたご夫妻のお話です...)
素晴らしい作品群。アートスタジオには大御所のアーティストたちが日替わりで制作に来ます。
21世紀を生きるアボリジナルのアーティスト達。もともと時間や働くといった概念のなかった民族が、この時代を共に生きることことは簡単なことではないのかもしれません。ジレンマを強く抱きながらも、家族と支え合いながら今を生きる彼らの姿は、強く、たくましく、凛としていました。そしてその彼らが生み出した素晴らしい作品や生き様は、わたしのこれからの創作活動の原点となりました。とてつもなく 人間くさい彼ら。人間の原点を喚起させる「大地から生まれた」彼ら独自のアート。アボリジナル先住民文化と彼らの生み出すアートは、これからもわたしを魅了し続けることでしょう。